ちどりやロックス2011

ちどりやロックス20112011年5月22日、朝からの土砂降りも午後には止み、ちどりやロックスの会場である京都芸術劇場・春秋座がある高台からは、京都の街並み越しに綺麗な夕焼けが見えている。

そんな美しい景色もどこ吹く風と、エントランスには開場前から長蛇の列が現れた。この熱気の最大の理由は、斉藤和義さんのライブだ。

今回のちどりやロックスは、わずか3日間でチケットがソールドアウト。慌てて用意した追加のチケットも、すぐになくなってしまったという。人気アーティストの影響力を目の当たりにしつつ、いざ会場内へ。

客席を取り巻くように赤い提灯がぶら下がり、桟敷席もある春秋座のホールは歌舞練場のような雰囲気だ。舞妓さんたちも多数参加するちどりやロックス。この提灯は、そんな演出のため?いえいえ、この提灯はもとからこの劇場についている装飾だとのこと。

さらに客席の中には、花道が一筋。これも歌舞伎の舞台を思わせる、和な演出のひとつである。実を言えば、この花道を設けることで、数十の客席が潰れてしまうそうだ。チケットが瞬く間に完売した今回、この花道も客席にして、少しでも多くの方に見ていただこうという気持ちもあった。しかしイベントの演出上、花道は欠かせないという判断のもと残されたのだという。この花道が、どんな風に生かされるのかも楽しみだ。

期待と熱気に溢れた満席の会場が暗転すると、ステージのスクリーンには反物を作る職人さんたちの作業風景や、舞妓さんたちの「祇園小唄」の稽古の映像が流れ出す。そしていざスクリーンが上がると、先ほどのヴィデオで稽古をしていた舞妓さんたちが、職人さんが作っていた反物を仕立てた浴衣を着て「祇園小唄」を舞い始める。
ちどりやロックス2011
まるで映像がスクリーンから飛び出し、続いているかのようだ。総勢7名の舞妓さんの浴衣はすべて、ちどりやの新作。いつもの舞妓さんの重厚な衣装とは異なり、またメイクもナチュラルなため、とても新鮮に見える。

曲の間に数名の舞妓さんが花道へと向かう。ステージ上に残った舞妓さんと一斉に、小さく折り畳んだ手ぬぐいを会場に投げると、客席がわっと盛り上がった。
ちどりやロックス2011
なるほど花道のおかげで、後ろの席の人にも手ぬぐいを受け取るチャンスがあり、会場がひとつに盛りあがるのだ。最後に「宮川音頭」を舞い、舞妓さんたちは退場。会場に活気を残しつつ、第一部が終了した。

続く第二部は、宮川町芸妓の小桃さんが舞う「黒髪」で幕が開いた。この「黒髪」という地唄は、舞妓が芸妓に襟替えする際に舞うという、花街でも特別な曲だ。恋の情感を謡うだけに、着物の第一正装である紋付をまといスポットに浮かび上がる小桃さんの舞いはとても艶やかで、先ほどの舞妓さんたちの愛らしい舞いとはまた異なった趣を見せている。邦楽のことを知らない人にでも、その魅力が伝わったことだろう。
ちどりやロックス2011

美しい舞いの余韻に包まれていると舞台は再び暗転し、世界的なドラマーであり、音楽プロデューサーでもある屋敷豪太さんの生ギターと歌に切り替わる。曲名はこちらも「黒髪」。和と洋、とまったく違うジャンルの表現でありながら、いずれも黒髪の艶やかさや恋の切なさが浮かび上がってくるようなパフォーマンスだった。2曲目からはHeart of Goldのメンバーも参加し、バンドでの演奏になっていく。
ちどりやロックス2011
ドラムがパワフルに響き、会場全体がビートに浸っている。粋な花街の夜からエネルギッシュでファンクな夜へと、会場の雰囲気も一転した。背後に流れる映像もすてきだ。

ちどりやロックス2011
途中、芸妓さんのシルエットがスクリーンに浮かび上がり、ロックと舞いのコラボレーションとなる。まさに「ちどりやロックス」の名にふさわしい、“京”洋折衷の心憎い演出である。

第三部はいよいよ斉藤和義さんのライブだ。彼がステージに登場するやいなや、会場はすでにスタンディング状態に。1曲目の「幸福な朝食、退屈な夕食」からすごい盛り上がりで、まるで会場全体がうねっているようだ。途中、東日本大震災後にYouTubeにアップされ話題をさらっていた、原発行政を揶揄した「ずっとウソだった」も披露。
ちどりやロックス2011
そんな硬派な曲の反面、MCの舞妓さんについてのトークでは頬を緩めて「来て良かった〜」とファンを笑わせ「せっちゃ〜ん!」と黄色い声援が飛ぶ中「京都に着いてすぐに、新福菜館に行ったよ」と報告。小さな会場だけに会場とのやり取りも、より親密な雰囲気だ。

「歌うたいのバラッド」に続いたアンコールでは、なんと屋敷豪太さんとふたりで花道から、ちどりやの新作浴衣を着て登場!長身のふたりに白地にアールヌーボーのポピー柄がお似合いだ。
ちどりやロックス2011
斉藤さんは前をはだけた着流し風のスタイルで、男の色気が全開。花道に駆け寄ったファンから裾をもみくちゃにされ、浴衣が脱げてしまわないかと見ている方がハラハラするほどだ。

こうして大歓声を受けたアンコールの1曲目は、屋敷さんも参加してツインドラムでの「虹が消えるまで」。映画の主題歌として小泉今日子さんに提供した曲のセルフカバーだ。
ちどりやロックス2011
そしてライブの最終曲となった「歩いて帰ろう」では、舞妓さんたちもステージに招き入れての合唱に。左右を舞妓さんに囲まれて、満面の笑みの斉藤さんは「舞妓は〜ん!」と絶叫し、大盛り上がりのうちにちどりやロックス2011は幕を下ろしたのだった。

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